Along a long ARIMA

2021.9.11〜11.23

朝、ぼんやり明るくなる。
鳥からはじまり、蝉が起きる。人も動き出し橋の上から目的地まで足早に移動する。宿の窓からうーんと伸びをする人もいる。朝日が昇りはじめてしばらく経っても街灯は灯り続けている。

雨が降れば川の流れは早くなり勢いを増す。穴という穴から水が吹き出す。公園にはイシクラゲがよく育ちよく滑るようになった。白馬は蒸されて大汗をかきながら左耳で山から山を見わたし続けている。ベンチに生えた黄土色のきのこたちは、はじめてみた日からほとんど背丈を伸ばさずにいる。

陽は隙間から差してくる。手元の画面を眺めていても、差すところに来ればたちまち強く照らされる。平行した道のどこかで川の流れる音がして、またどこかでバイクのエンジン音がやってきては遠のいていく。歩き続けていれば、そのうち何かの死骸や干からびたあとを見つけることになり、方々に垂らされている糸に絡めとられる。長い長い道なのかと思えば突然視界が拡がり、やはりそこには山がある。

時間がくれば鐘が鳴る。今日は時間がきていないのにポコンと鳴った。目に注目すれば目に、耳に注目すれば耳に、足の重さに注目すれば足に、瞬間たくさんの情報が流れてくる。陽は左頬を照らし、右のえりあしを温める。足元には青いドングリに潰れた木苺、右の方からボコボコと泡が音を立てている。上の段にあがれば静かに浮かぶ気泡があることももう知っている。ずっとそこに在るからだ。

不思議なことは道の下から水の音がすること。マンホールを覗き込むとやはりそこを流れていた。ふと元気なお早うございますの声に顔をあげれば、各家先には洗濯物がいつのまにか並んでいて、もうそんな時間なのかとはっとする。いつしかグミがなっていた木ももうその気配はなく、その代わりに薄紫の花が咲いているくらいだ。

そして、私は今から川へいく。
貴方もどうぞご一緒に。

アーティスト情報

こんにちは。
わたしたちはダンサーの中根千枝と内田結花です。
ダンスをつくるため踊るために、この有馬温泉にやってきました。
しかし何度振付を立ち上げても、来る度に異なる風景が立ち現れ、毎回準備し決めた通りにはいきません。そして、この地が留まることなく、息づき動き続けているのだと日々知ることになるのです。

「Along a long ARIMA」はそんな有馬温泉でダンスをつくり踊ろうとした、わたしたちの記録です。
有馬温泉に設置した5つの二次元コード(QR)にその記録の一部を置きました。ダンスをつくるため踊るために過ごした時間の断片たちです。どうぞ5つの場所を辿ってみてください。

*5つの二次元コードのなかには、なんらかの形で次の場所を示しています。画面の指定場所をタップください。

*5つの場所を巡る道中にも、小さな出来事のかけらを散りばめました。探してみてください。

*この作品は「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」に参加しています。会期中の4日間(合計12回)各地でダンスを上演します。